AMDは、必要かどうかに関わらず、最新のプロセッサをAI向けに開発している

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AMDは、必要かどうかに関わらず、最新のプロセッサをAI向けに開発している

AMDは、ビジネスアプリケーション向けに設計された最新プロセッサを発表しました。ラインナップには、Ryzen AI 9 HX PRO 375、Ryzen AI 9 HX PRO 370、Ryzen AI 7 HX PRO 360が含まれます。AMDのZen 5マイクロアーキテクチャをベースに構築されたこれらのデバイスは、エンタープライズ向けの高性能と高度なAI機能を実現します。

最上位モデルはRyzen AI 9 HX PRO 375で、12コア24スレッドのプロセッサで、24MBのL3キャッシュと最大5.1GHzのターボブーストクロックを備えています。一方、Ryzen AI 9 HX PRO 370は、同じL3キャッシュとクロック速度を備えていますが、コア数は8コア16スレッドです。Ryzen AI 7 HX PRO 360は、6コア12スレッドで、16MBのL3キャッシュと最大5.0GHzのターボブーストクロックを備えています。

これらのチップは、コンシューマー向けのRyzen AI 300シリーズを模倣していますが、エンタープライズ向けにAMD PROセキュリティ機能を搭載しています。可変熱設計電力(15~54W)により、超薄型ノートパソコンからワークステーションまで、幅広いデバイスに適しています。

新シリーズの注目すべき特徴は、55テラオペレーション/秒(TOPS)を誇る専用NPUを搭載していることです。これにより、これらのプロセッサは、リアルタイム言語翻訳、自動ビデオ編集、セキュリティといったAI主導のタスクを処理できます。AMDがPROシリーズにNPUを搭載するのは今回が2回目ですが、IntelのMeteor Lakeなど、他のプラットフォームもvPRO対応SKUにAI機能を導入しています。しかし、AMDの実装は前世代よりも高いTOPSを実現し、Intelの製品よりも高速です。

AMDのセキュリティへの注力は、特に情報セキュリティが混沌としている昨今において、大きな意味を持ちます。Ryzen AI PRO 300シリーズには、「AI強化」の脅威検知機能とクラウドを介さないローカルデータ処理機能が搭載されています。また、セキュリティスイートのハードウェアベースの暗号化とリモート管理機能も推進しています。特にリモート管理機能は、多数のデバイスを管理するIT部門にとって不可欠な要素です。

AMDのRyzen AI Pro 300シリーズのパフォーマンスに関する主張を強調した記者会見のスライド

AMD Ryzen AI Pro 300シリーズの性能主張 – クリックして拡大

AMDは、Ryzen AI PRO 300シリーズがIntelのMeteor Lakeプロセッサと比較して最大40%優れた生産性性能を実現すると主張しています。しかし、Meteor Lakeは28W未満のセグメントをターゲットとしており、市場に大きな影響を与えていないことに注意が必要です。そのため、AMDの55TOPS NPUとマルチスレッド性能は印象的ですが、この比較だけでは全体像を把握できない可能性があります。

Ryzen AI Pro 300シリーズのAIパフォーマンスを競合製品と比較した記者会見スライド

Ryzen AI Pro 300シリーズのAIパフォーマンスを競合製品と比較 – クリックして拡大

AMDが自社の最高NPU性能をAppleのM4やIntelのMeteor Lakeと比較し、45TOPSのNPUを誇るQualcommのSnapdragon X Eliteを考慮に入れていないことから、さらなる疑問が生じます。QualcommのチップはvPROやPROには対応していませんが、MicrosoftのCopilot+要件を満たし、MicrosoftのPlutonセキュリティをサポートしています。

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AMDはRyzen AI PRO 300シリーズを「Copilot+対応」と大々的に宣伝し、MicrosoftのAI強化生産性ツールとの統合性を強調しています。リアルタイム文字起こしやスマートドキュメント分析といった機能によって、日々の生産性が大幅に向上すると期待されています。しかし、リアルタイム翻訳やスマートスプレッドシートといったAI強化ツールを、どれほどの企業が優先するかは不透明です。

AIはIT役員会の活気を奪っているが、CFOがハードウェア予算を承認する際にAIが決定的な要因となるかどうかはまだ分からない。AMDの最新チップの成功は、チップ自体だけでなく、MicrosoftのAIツールの採用にも大きく左右される可能性がある。

AI主導の環境において、AMDのRyzen AI PRO 300シリーズは、エンタープライズコンピューティングの未来を見据えた、まさに計算された賭けと言えるでしょう。強力なNPUと堅牢なセキュリティ機能を備えたこれらのプロセッサは、ビジネスオペレーションにおけるAI統合の高まる需要に応えるように設計されています。しかし、その成功は、MicrosoftのAI機能がどれだけ迅速に展開されるか、そして企業がそれを受け入れる準備ができているかどうかに大きく左右されるでしょう。

現時点では、AMD は AI 主導のエンタープライズ市場における有力候補としての地位を確立していますが、この賭けの長期的な影響はまだ未定です。®

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